カセットやレコードが若者にブームってここ数年ずっと言われてない?

ここ最近レコードやカセットテープの話題をテレビなどでも見かけることが増えた。レコードはこの10年で製造数が12倍アップしているらしく21億1700万円という生産額らしいけど、音楽業界全体で捉えるとまだまだ潤いを与えるには遠い数字に違いない。単純計算で3,000円のCDが70万枚売れたら21億円になる。

www3.nhk.or.jp国内で二つしかないレコードのプレス工場は本当に込み合っていて、T化成で働く知り合いは多忙すぎて言葉数が減っていたから、レコードが盛り上がっているのは確かなのかもしれない。

NHKの朝の番組やワールドビジネスサテライトでは「カセットテープが若者の間で人気」といった特集をしていたけど、カセットテープなんて有名なレコ屋に行っても取り扱いは少ないし、ハードオフのようなリサイクルショップに行ってもほぼほぼ演歌のカセットテープしか見当たらない。ところで演歌の背表紙ってなんで黄色背景が多いのだろうか?

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演歌のカセットテープ

少し調べてみたところ広告において黄色は視認性の高い色らしく、子供向けの商品に使うと効果的らしい。ほか、ノートンセキュリティは黄色と黒で視覚的に「危険」を表現しているとか、いろいろと考えているのだと感心しつつ、演歌って子供向けじゃないし、単純に人の目を引くために黄色を採用しているのだろうね。サブスク全盛の今ではそこまで気にしなくなったけど、昔はCDジャケットを制作する際に背表紙が少しでも人目に付くような差別化を図るため、あれこれと試行錯誤したものです。やたらピンク系の背表紙が多かったり、時期によってトレンドがあってCDショップの棚を眺めているだけで楽しかったな。CDと比べてレコードのジャケは大きくて立派だけど、背表紙が細すぎるが故にデザイン性も皆無でどうしても単調になってしまう。

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EDMのコンピCD

デザインの話を続けると、ドンキとかで売ってるEDM系コンピのいかがわしい感じとか、ターゲット層への訴求力がブレてなくてすごいよね。パチンコっぽい下衆なデザインを眺めているだけで圧倒されてしまう。

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カセットウォークマン

話が脱線したけども、わたしが普段みているツイッターのタイムラインは同じような趣味嗜好のひとばかりだからか、日々カセットプレイヤーを持ち歩いて写真を投稿してたり、レコードの写真を投稿してたりと、あたかもカセットやレコードが流行っているような錯覚に陥りそうだけども、実際のところ言うほど流行っていないのが現実で、需要は少なからず増えているだろうけどレコ屋で見かけるのはわたしのようなレコード依存症の中年ばかりだし、電車のなかでカセットウォークマンを使っている若者はもちろん中年ですらいまだに見かけたことがない。もし、電車内でカセットを聴いているひとを見かけたらどうするんだろう?そんなシーンを妄想するぐらいがちょうどよいのだが、恥ずかしくて絶対に声はかけられない。たまに街中で自分が好きなバンドのTシャツを着ているひとは見かけるけど「あっ、そんな渋いTシャツ着ているんだ、きみは」とか、一方的に嬉しくなってワクワクする感じってなんかよいよね。とか薄気味悪い共感を求めてしまったけど、話を戻すとラフトレードが存在していた90年代の西新宿のレコ屋のほうが若者は多かった記憶があるし、レコ屋にデモテープが無料で置かれていたりもした。あの頃20代だった青年たちが飽きずに音楽を聴き続けた結果、高齢化現象が起きているのだろう。

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何も考えずボンドクリーニングして溝を壊した一枚

しつこいようだが、あの頃と変わらずわたしはカセットやレコードで音楽を聴くことが好きなわけだけども、ポジティブな意味でよく言われているような音の「温かみ」だったり「丸さ」だったりはプラシーボ的な効果が大きいと思っている。そんなことを言ってしまえばアナログ支持者からは反感を買うかもしれないけど、アナログの溝が擦れたスクラッチノイズだったり、テープの走行ノイズだったりが「温かみ」だったり「丸さ」を印象づけているんじゃないかと。CD、レコード、カセット、サブスクの音源を目隠しをして聴き比べをしたら、おそらく2割ぐらいしか正解できない自信はある(MDはほぼ使ったことがない)。結局のところ、どういった環境で音楽を聴くのかという違った観点での話になっていきそうだし、たとえばメタルテープを高級オーディオで録音して高級スピーカーから鳴らしたら、もはや聴こえ方はカセットの音じゃないだろうし、ハイレゾ音源を高級Bluetoothスピーカーで鳴らしたら、もしかしたらレコードっぽく聴こえるかもしれないし、そもそも普段私が聴いている音楽は一発録りしたようなパンクバンドだったり、ヘロヘロなオルタナだったりするので、再生する媒体ではなく録音フォーマットにも大きく左右されるに違いない。

だから、ひとがどのような環境で音楽を聴くのかは自由でよいと思っているし、「フィジカル VS サブスク」みたいな議論もあんまり興味がなかったりもする。

どちらにも良いところもあるし、悪いところもある。冒頭で触れたNHKの番組ではカセットと配信の音源を波形で解析して違いを説明してたけど、配信は低音がカットされてるとか言ってたが、サブスクの音源をすごい安っぽいスピーカーから流してたからカセット関係なく、そりゃ低音カットされるわなとか、無言でテレビに突っ込みをいれていた。

もし、これからカセットやレコードを聴こうと思っているひとがいたら、メリットだけではなくデメリットがたくさんあることも知ってほしい。アナログの魅力を伝える記事って、あんまりマイナスなことが書かれていないので、思いつくままにダメなところをあげてみる。

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新品のくせして再生してすぐにゴミになってしまった可哀想な一本

まずレコードもカセットも保管状態が悪いとすぐにカビる。レコードはカビたら「プチプチ」といったノイズがとんでもなく鳴るし、カセットはテープが絡まったり、あげくは切れる。どちらも傷が付いたら直せない。レコードは盤が歪むと音飛びする。カセットはテープが伸びる。早送りしたり盤やカセットを裏返すのも面倒だし、曲の分数も分からない。どちらも永久に聴けるものではなく劣化するし、そう考えると劣化しないデジタルなデータを使用したサブスクの音源なんて最高に便利なんだけど、苦労してでも聴きたいのがアナログなのかもしれない。

アナログ音源とサブスク音源の違いを雑に例えてみると、アナログは自炊でサブスクは外食のような感覚だと思っている。フードコートには多種多様なお店があって、さらにはたくさんのメニューがあって、その場で準備せずに手軽に食べられるのがサブスクで、食材を買い漁ってからお気に入りの調理器具を使って自炊するのがアナログ的なのかな。

 

どっちが美味しいのか?

 

という問いに正解はないと思うけど、「受動」と「能動」の違いとか?いや、そうでもない気もしてきたし、よく分からなくなってきたけど、そのときの気分によって使い分ければよいだけで、ごちゃごちゃオチのない文章を長々書いてみたけど、本当の違いはなんとなく分かっていて、好きなものを所有したいという所有欲が一番大きな違いだと思っている。個人的には。所有することで刹那的にでも満たされたい。音楽に限らずだけど。

 

ここでブログを締めようと思ったら、あのひとの顔がじわっと頭に浮かんできた。あのひと、ミニマリストのね。こんまりさん。こんまり先生にはこんな有名な名言がある。

 

「ときめくものだけを残しましょう」

 

この名言はもっともだけど、

 

「ときめかなかったものが、いつかときめき始める瞬間がたまらねぇんだ」

 

とか蒼天の拳のザコキャラが呟くような屁理屈を言いながらブログを締めます。

 

追伸

昨日、有線イヤホンが若者の間でブーム。って記事をみたよ。

 

 

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